ビートジュースの現象


beets_flickr_BDsWorld

ここ2~3年、海外ではビートジュースが大流行りです。
持久系のスポーツにおいて、飲むだけでパフォーマンスが上がるとか、、、
2012年のロンドン五輪 マラソンでは、アナウンサー(国際放送)が話題にしていたほどです。
が、本当にパフォーマンスは上がるのでしょうか?

一般(健康管理のため)のサプリメントなどと違い、スポーツのパフォーマンスを上げる為に、運動科学の分野からのテスト・研究で発見されたのがビートジュースです。

2007年辺りから 硝酸塩の効果は科学的(テスト・論文など)に謳われていましたが、2009年頃よりビートを使った硝酸塩の研究が始まりました。
(ビート:野菜の中で 硝酸塩の含有量が高い)
硝酸塩を摂って体内で一酸化窒素に変える事で、いろいろな効果が表れます。
・血管をリラックスさせる(拡がる)→ 血圧が下がり血行は良くなる。
・神経伝達が良くなる → 筋肉収縮性(筋収縮)が上がる(心臓も含む)
ミトコンドリアの活性が上がる。

つまり、普通より少ないエネルギー消費で同じ力が出せる → 持久力が上がる
では、3回に分けて 時系列に沿ってまとめてみましょう。
先ずは2011年前半まで、、、

以前から血圧を下げるために精製された硝酸塩が使われていた。

2007年 スウェーデン スポーツパフォーマンスの向上を狙って、硝酸塩(精製)の研究が始まる。

2008年 スウェーデン の研究で、、、、
硝酸塩から一酸化窒素に変わる工程は、“硝酸塩→亜硝酸塩→一酸化窒素”であることが判明。
ただし、細胞内で“硝酸塩→亜硝酸塩”は変化しない。
“硝酸塩→亜硝酸塩”は 口の中のツバに含まれる細菌が必要!

テストは‘マウスウォッシュによるうがい(15分前)の有り無しで、血中の亜硝酸塩濃度を計る。

mouthwash

縦軸は血中の亜硝酸塩濃度
横軸が時間
白〇はマウスウォッシュなし
黒〇がマウスウォッシュあり

うがいをして15分で硝酸塩を摂ります。
15分、30分、60分と、明らかな差が出ています。

2009年 エクセター大学(イギリス)の研究
8人の男子にビートジュース500mlを 6日間飲ませる。
(ちなみに500mlのビートジュースの硝酸塩量は ほうれん草1.6kg・レタス3.1kgに相当します)
プラセボ(偽薬)を飲んだ被験者よりも、枯渇テスト(TTE)で16%のアップ。(レースなら1~2%位)



* TTE (Time to Exhaustion Test)
枯渇テスト:持続力を計るテスト。バイクでケイデンス60以上を維持しながら、段々負荷を上げていく。ケイデンス60を維持出来なくなったら終了。
数値は時間(秒)で計測。

この時点で、何故?ってことはハッキリしないまでも、硝酸塩→一酸化窒素の効果でエネルギー消費が節約できる、、、 つまり持久系スポーツのパフォーマンスが上がるとの仮説が、、、

この数か月後から プロ選手がビートジュースを摂り始めた。
(ロンドン五輪とのからみもあった模様です)

2010年 エクセター大学の研究で、 ’精製L-アルギニン’でビートジュースと同じ効果を発見。
L-アルギニン+酵素で一酸化窒素が作られます。
プラセボ(偽薬)を飲んだ時より枯渇テストの数値が20%↑
今回のテストは、テスト前に期間を取って少しづつ摂取ではなく、テストの一時間前に一度でとった(確実に一酸化窒素上がってる)状態でのテスト。

2011年
1月 エクセター大学の研究の続き。
ビートジュースのプラセボ(硝酸塩を抜いた偽薬)テスト。
ビートジュース、硝酸塩以外(例えば クルセンチン、レスベラトロールなど)の栄養素での効果かどうかの確認。
プラセボを飲んだ時は効果なし。
ビートジュース飲んだ時のテストと同じ耐力(前の結果と同じ)
今回は枯渇テストだけではなく、低い強度の運動のテストも行う。
ビートジュースを500ml 4日間摂取で、歩くレベルの運動でも 酸素消費量が下がった。
強度の高い運動だけでなく、低強度の運動にも効果アリとの結果。

2月 スウェーデンのグループ。
スポーツに限らず、身体的なメカニズムとしての研究からのフィードバック。
それによって、硝酸塩のメカニズムにもう少し情報が増えた。
細かい話になるけど、硝酸塩があれば、少ない酸素でも ミトコンドリアがアデノシン三リン酸(ATP)を作れる。

これらはもしかして野菜(特に緑の葉っぱ野菜)を多く食べる食生活の効果?

4月 イギリスで実際のTTテスト(枯渇テストではなく)
枯渇テストで、レースの効果(タイム)は計算である程度予測できるが、実地テストができれば確実。
9人のエイジグループレベルのサイクリスト。
ビートジュースを500mlをTTのテスト2.5時間前に飲む。
ちなみにマウスウォシュでうがいしない。 プラセボも使って確認。
4km TT 2.8%↑ (6’26 → 6’45 min : ビートジュース→プラセボ)
10km TT 2.7%↑ (26’9 → 27’7 min : 同上)
※10㎞TTで約1分もタイムが縮む : スゴいですよね!
面白いのは、飲んでも 飲まなくても、使った酸素量は同じだったのに、ビートジュースを飲んだ時には出力が高かった。 また、ビートジュース飲んだときは血漿の量が高かった。

続きを読む

Top photo credit: “B.D.’s World“. CC License.

この記事が役に立ったと思われたら、ぜひ「いいね!」や「シェア」をお願いいたします。 また、Twitterもやっております


follow us in feedly

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください