ビートジュースの混乱


Red beet at Alnarp

前回の話は硝酸塩・ビートジュースの良い面ばかりでしたが、今回は研究が進んだからこそ見つかった疑問点を書いてみます。

ビートの研究が世界中に広がっていろんな意見出てきました。
その中で大きく三つの疑問(話題?)が、、、

・健康に対して
・サプリメント vs 本物のたべもの
・エリート選手に対して

1. 健康に対して
硝酸塩は体に良くない?
1960年代以降、加工肉(ソーセージ・ベーコンなど)の防腐剤に使われてる硝酸塩が、発癌物質を作るので身体に悪いイメージというがあります。
が、現代の硝酸塩摂取は、ほとんど加工肉からではなく野菜です

最近(この10年間位)の研究では、硝酸塩と癌との因果関係はほとんど報告されていません

また 加工肉の中で、硝酸塩が発癌性ニトロソアミンを形成しますが、人間と動物を使った研究(1,2,3)では、硝酸塩自体は発癌物質ではないと分かってきました。

逆に 2008年の研究で、硝酸塩には心臓血管系の健康効果があるとわかってきました。

合成硝酸塩は、血圧を下げるための薬として使われています。
が、合成硝酸塩を長い時間を使うと、身体本来の一酸化窒素を作るメカニズムが止まるとも。
合成硝酸塩は有機硝酸塩です。
それに対して、食べ物(ビート・ほうれん草など)に入っている硝酸塩は無機硝酸塩。
最終的にはどちらも一酸化窒素に変化しますが、それぞれに体内でのメカニズムが違います。
有機硝酸塩:血管で一酸化窒素になる
無機硝酸塩:口の中の細菌から変化が始まる一酸化窒素

そして、有機硝酸塩を使ってる患者さんは、長い期間使っていると効かなくなるとも聞きますが、無機硝酸塩はそんな事はありません

今後、無機硝酸塩を取りすぎる(野菜を食べすぎ)と血圧上がるとの研究結果が出ないとも限りませんが、現在のデータではそんな事はないでしょう。
これらと硝酸塩自体の研究で、最近は(まだハッキリはしていませんが)スポーツ以外の研究(医療・健康)で、やはり硝酸塩は健康に必要との考え方も増えてきています。

2.サプリメントでも同じ効果?

ビートジュース、ビートは、味的に好き嫌いがあるようです。
また、効果の出る量を取るとなると、かなりの量を飲む(食べる)必要が、、、。
飲んだ後にトイレ(大)に行きたくなったり、レースに際して不便とか、、、。
ならサプリメントの方がいい?

2011年10月、スペインで 硝酸塩サプリメントを摂ってのテストがありました。

対象は11人の高レベルサイクリストとトライアスリート
テスト3時間前に硝酸ナトリウム(10mg/kg 体重)を摂る。

結果は酸素摂取量が下がった。
パフォーマンスには出てないけど、硝酸塩サプリを使った方が酸素消費量が減りました。
なので その事から、硝酸塩を摂った時はパワーの効率が上がったと言えます。

研究者によると、硝酸塩は問題ない(口の中でゆっくり亜硝酸塩に、さらにゆっくり一酸化窒素に)



ですが、硝酸塩(ビートジュースを飲むより)は無毒性ですが、亜硝酸塩は毒性(シアン化合物と同じ位)があります。
ある選手が間違えて、亜硝酸塩を摂ってしまい、メトヘモグロビン血症の症状が出た事件もありました。
有機硝酸塩・有機亜硝酸塩(ニトログリセリン・亜硝酸アミルなど)は、たくさん摂ったら死に至ります。
間違えるというリスクを思うと、ほんとの野菜・果物で摂取したほうがいいと言えるのではないでしょうか。

3. エリート選手に対して
ここまではエイジレベル選手での結果ですが、エリート選手にも同じ効果があるのか?
というのは、エリートクラスになると、日常生活(食生活)でも相当の気の使い方をしてるはず。
それでも尚、この効果が出るのか??

2012年8月(オリンピックの後)発表された イギリスのバース大学テスト結果では、それほどの差は出ていません。

10人のスキー男子クロスカントリー選手(ジュニア)に協力してもらい3つのテストをしました。
トレッドミルで5分走(10km/h)
トレッドミルで5分走(14km/h)
5㎞ TT (自走、室内トラック)

2時間半前に硝酸カリウム(614mg)と偽薬(硝酸カリウムなし)を摂って 1~3を走った結果、酸素の消費量とタイムトライルの結果に ほとんど差がありませんでした。
下のグラフ、右が硝酸カリウム、左が偽薬を摂った結果です。

beet-juice-time-trial

研究者の見解は、硝酸塩(硝酸カリウムを含む)はエリートクラスの選手には効かないのではないか?
今回のテストの10人のVO2maxは平均70ml/kg/min。
今までのテストの平均は56~58ml/kg/min (エイジクラス程度)
硝酸塩は、体内で亜硝酸塩に変換させることでパフォーマンスが上がるのだが、エリートクラスまで鍛えられた身体では、硝酸塩から亜硝酸塩に変換できない?
※ VO2max:最大酸素摂取量

次の可能性は、続けて摂る必要がある?
という事で、オランダのマーストリヒト大学が行った二つのテストは
6日間の濃縮ビートジュースローディングと偽薬との比較実験。(10kmTTのタイム計測)
結果は偽薬と比べて1.3%の向上。
また、実験2時間半前に濃縮ビートジュースと偽薬との比較実験。(1時間TTのタイム計測)
変化なし。

この実験から、一定期間摂り続ける必要があると思われます。

また、硝酸カリウムサプリメント(市販のビートジュースを含む)とビート フレッシュジュースの違いという事も考えられます。
効果の確認されたテストでは、ビートのフレッシュジュースを使っていました。

考察の流れは
ビートのフレッシュジュースを飲んだらパフォーマンスが上がる
硝酸塩を抜いたモノでは変化なし
だから、硝酸塩が効いています

だけど 正確には、3 は1,2 と繋がっていません。
硝酸塩と ビートの中の他の物質との化学反応で 効果が出る可能性も、、、
硝酸塩を抜くと効かないけど、硝酸塩のみでも効かない。 詳細はまだ不明です。

2013年10月 グエルフ大学(カナダ)陸上エリート選手(1500m)での研究(まだ発表されていません)

10人の1500m平均タイム:3:55(平均VO2max 79ml/kg/min!!)
ビートジュースかプラセボ
1日目1500mTT 2.5時間前に1500ml分
そのあとの6日間は1000ml分
8日目1500mTT 2.5時間前に1500ml分
結果は2回とも結果変わってない。

研究者の結論: エリート選手は、日頃の食生活や練習で 血管が広がるなどの身体が出来てますから、硝酸塩を摂取してもあまりかわらない。

もしこの研究者の結果が正しいと考えるなら、エリートクラス以下の選手に効果あり。→エリート選手残念!笑)
とはいえ、研究の余地が残ってる可能性も考えられます。
その辺りは今後の研究に期待したいところです。

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Top photo credit: “Dag Endresen“. CC License.

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