酸素はどんだけ大事?


OleEinarBjoerndalen_flickr_GAP089

今年のソチ五輪で、ビョルン・ダーリが持つ世界記録のオリンピック金メダル(12個)が、同じノルウェーのオーレ・アイナル・ビョルンダーレンに破られました(13個)が、

彼は2年前に別の記録も破られてしまいました。 一般のニュースには出てないけど、その記録とは世界一の酸素スーパーユーザー。

食べ物のエネルギーから 運動に必要な筋肉のエネルギーへの化学変化には、酸素が必要です。 この事から、“酸素は運動の通貨” とも言われています。
ダーリの身体は、肺に酸素を吸う→血流に移動→そして筋肉に運ぶ(酸素摂取)の能力の高さが、12個もの金メダルを取れた大きな要因と思われます。
筋肉に酸素が供給されてこそのパフォーマンスですからね。
上手く酸素を使える人が、トップに立てる可能性が高いとも言えます。

90年代の計測では、ダーリは最大酸素摂取量(VO2Maxともいう)が1分間に体重の1kgに対し96mlもの酸素を摂取することができました(96ml/kg/min)。
また 一昨年、ノルウェー(また?)のオスカー・スヴェンセン(ロードバイクのJr選手)が97.5ml/kg/minを記録。

ちなみに、一般的な26~35歳男子のVO2Maxは40~42。 女子が35~38と言われています。

ただ、もっと酸素使う(取り込む)というのは、単純に深呼吸する事ではありません。
ダーリのような酸素スーパーユーザーと一般の人と何が違うのかは、現在もまだまだ研究中です。
空気にある酸素を、筋肉まで運ぶルートのネックがどこにあるのかは、異論の多いトピックです。
今までの研究では肺、心臓、筋肉、脳と言われています。


一つの考えとしては、高強度の運動時に酸素が肺から血流に吸収するのが間に合わず、血中の酸素レベルが下がる。
この状況は、ある意味 運動時に誰でもなってしまいます。

ケニヤの長距離ランナーは標高2000m以上に生活してるので、酸素の薄い空気に慣れていて 酸素ルートの効率がいいので平地でのレース時に利点がありますが

カナダのブリティッシュコロンビア大学研究でケニヤの有名ランナーの肺機能をテストしました。

取れたデータを見ると、ケニヤの選手も他国の選手と同じ、運動中の酸素不飽和化パターン。 また呼吸器系も変わらない事が判りました。
違う言い方をすると、ケニヤ人が長距離ランナーとして強いの理由は、良い肺をもってるからではない。



けどそれは、肺を改善する事ができないという意味ではありません。
呼吸するにはエネルギーを使っています。 人間は呼吸するため筋肉は3~5kgもあるので、他の筋肉と同様に疲れてきます。
この筋肉の効率を上げれば、呼吸器系の筋肉から運動に必要な筋肉(手、足)へ、普通より血液を流せるようになります。

ケニヤでの研究者とは他でも「呼吸器系の筋肉トレーニング」の研究が進んでいます。
こういうトレーニングは特別のチューブを使って、吸う空気に抵抗を作って、呼吸するための筋肉を鍛えます。

それに関しては21個もの論文が出されていますが、持久系スポーツ(ランニング、水泳、自転車)に効果あることが解っています。

血液
もう一つのネックになる可能性ところは血液自体。これは標高に住んでる人には間違いなく利点あります。
平地から標高の高いところに行くと、酸素の薄い空気に合わせるために体が酸素を肺から筋肉に運ぶ赤血球の量を増やします。
この効果は平地に戻っても2~3週間残ります。
赤血球量アップの為に、トップ選手は大会前に標高の高いところに行って練習します。
これは有名な話ですよね。


最大酸素摂取量はほんとの限界?
2009年、フランスのフリーダイバー ステファン・ミフスドが11分35秒もの無呼吸記録を更新。

一般の人は、まだまだ酸素があるのに脳の遭難信号で呼吸をしてしまう。
ミフスドに聞くと、その信号を無視する練習で長く持たせるとの事。

伝統的に最大酸素摂取量を測定する時には、テスト機械(固定自転車・ランニングマシン)で徐々に強度の設定を上げていきます。この運動をしながら吐く息を検査してどのぐらい酸素を摂取したかがわかります。
vo2max_flickr_FtCarsonPAO

今年一月にあった研究では、参加者には自身で強度の設定をしてもらいました。
その結果、今までの測定方法より高い結果が出ました。
この結果から考えると、最大酸素摂取量を導き出す要素は、肺 血液 以外にもあるのかもしれません。

2012年に南アフリカでも変わった測定の仕方で計測しました。
強度を上げるのではなく、逆に徐々に下げていく。
この逆方法も普通の結果より高い数値でした。
研究者はどうしてかわからないけど、100kmのウルトラマラソンに準備してる選手のトレーニングにこの逆測定を使って研究中です。
論文の発表が楽しみです。

肺と血流が最大酸素摂取量の限界を決めるというのは1923年からの理論。
今となっては、この理論自体を考え直す必要があるのかもしれません。

スヴェンセンも言っています。 まだ18歳ですが「レースで何度も最大酸素摂取量の低い選手に負けた事がある」
ただその直後 1月に、ジュニアTT世界選手権で優勝しました。
酸素のスーパーユーザは金メダルが取れるという保障ではないのですが、大いなる可能性ではありますね。

Photo credits:
GAP089”. CC License.
FtCarsonPAO”. CC License.

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