今回から 夏本番に向けて、脱水/水分補給についてのシリーズ投稿をします。
このシリーズでは、中核温のメカニズム、水分補給と中核温の影響、水分補給の信念(とその変化)、水分と熱中症、そして“渇き”のメカニズムを説いていきます。
3パートに分かれますが、フェイスブック、ツィッターやGoogle+でフォローをしてもらえれば、アップを見逃さないで済むかと思いますのでよろしくお願い致します。
それでは:先ずは脱水になると ホントに体温が上がる?
強度を上げると体温も上がる?
私の知っている最も古い体温調節についての研究は、1938年デンマークから発表された「筋肉仕事中の体温調節」。(“Die Regulation der Korpertemperatur bei Muskelarbiet” Marius Nielsen オンライン版なし)
この研究の中でいくつかのテストをして分かったことは:
1) 高いワット(強度)の運動をすると中核温が上がる。
2) 運動中の中核温は高い状態でコントロールされている。
ひとつのテストは、「180ワットの運動を4時間」 で体温(直腸温)はずっと38度でした。
身体の代謝率により体温が変わります。 言い換えると: 運動強度を上げると体温が上がる。
その後 約20年間が過ぎて 1960年の研究。
体の中核温は運動の最初の30分に上がり続けて、その後は運動の強度に合わせて運動終わるまで正確に規制されている事がわかってきました。
長時間の運動をすると、脳の中の温度調整センター(視床下部)は 運動の強度に体温を合わせていきます。 これは気温とは別です。
視床下部が 運動時にいろいろなシステムを動かすことで、問題なく(普通より高い)体温対応ができる。
水を導入
これまでは 水分補給は研究に含まれていませんでした。 全て運動強度に対してのみです。
さらに10年を経過して(1970年)、 水分補給と体温調節について初めての研究がありました。
この研究で、2時間のランの後に 水分をとってないランナーが水分をとったランナーより 体温が高かった。
これで「水分と体温に関係がある」との説が成立しました。
これとこの後のいくつかの研究で、体温上昇に対しての考え方が大きく変わってきました。
強度で体温を決める概念がなくなって、“脱水による影響で体温が上がる” になりました。
1992年、1970年の発表より 更に細かい論文が発表されました。
今回は、ラボ内で 幾つかの水分量を補給しながら、バイクを2時間をこぎました。
結果は、水分を取っていない場合(白いまる – No Fluid)が一番直腸温が高く、一番飲んだ場合(黒いまる – Large Fluid)が最も低かった。
この二つの論文(有名研究者)で、水分を取ると体温を低くできるとの証明ができました。
ですが、人にほんとに適応できる?
コントロールされてる研究施設(方法)で正しくデータが取れた。 もう間違いないでしょ?
となりそうですが、結果をもう少し細かく見ると、テスト方法の制限で対応できてないポイントが、、、
風速スピードの影響
風速スピードは水分補強より大きい。
実は、風の対流冷却には かなりの影響があります。
ここで対流冷却の細部は説明しませんが、モデルで計算すると 2時間の運動テストで、風速 たった1km/hの変動で体温は2度も変わります。
1960年の研究に使ってたエリートランナー(平均VO2max 74mL/kg!)は、VO2max:70%で走らせました。 速度にしたら15km/h 以上です。
ですが、ラボのファンは 風速5.7km/hの風しか送ってなかった(散歩してる位の風速)。
1992年の研究も同じように、使ってたサイクリストのパワーから計算すると 速度30km/h位なのに、吹いていた風は9km/hでした。
だから、
アスリートは高い強度でかなり熱量を作っていますが、、、
正しい風速ではなかったから、冷えるチャンスが無かった。
この二つの研究結果は、確かに水分の影響はあると表示されてますが、1992年の研究の風速をもうちょっと上げれば(30km/hではなくても)結果が変わってくる可能性があります。
また、もう一度グラフを見ると、水分を取ってない場合と たくさん取った場合で、体温は0.8度しか変わっていません。
さらに注目なのは、水分を取っていない場合でも、とくに不具合や熱中症の症状の記録がありませんでした。
水分を飲まなくても、最高体温は運度してる時の温度とすれば許容範囲内だった(39度位)ワケです。
こうして見ると、適正な風を受けていれば最高体温はもっと低かったとも考えられますし、水分による影響があったにせよ それは微細なモノであると言えるのではないでしょうか。
(ちなみに1992年の研究は、ゲータレードの助成金で行われています。)
固定された強度
この二つの研究の、もう一つ応用できない理由は、運動強度が固定されていたという点です。
ラボでテストされたので、ランナーとサイクリストの強度が決められています。
研究の参加者が、自分に合うペース(ラン・サイクリングの速度)に自由に変えられないから、代謝率を変えられない。
普通は暑くならないために、感覚で自然にペースを調整するけど、今回は強度が指定されていたので、不自然な状態になって ペースを落とせない。
結局
水分摂取が体温に影響しない事ではない。
一定(固定)の強度だったら影響はあります。 ただこの影響は少ない。
風速が足りない事で拡大影響されてるから、実際はさらに影響が少ない。
こういったラボでの研究結果は、適用の限界がありますね。
現実的には2~3時間ずっと同じ強度で運動するワケではないので、完全にイコールとはならないようです。
身体は、疲れたり 脳が体温が高すぎると感じたら、自然と強度を落とします。
そうする事で体温調整をしています。
体温は上がり続けない。 もしくはそれなりに強度を下げれば体温も落ちる。
ラボと現地研究との違いが次の投稿に、、、
Photo credit: “redjar”. CC License.
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なるほど~!
マラソンレースのときは風量は自分でコントロールできませんが、水を体にかけるというのが効果ありそうですね~。