運動中に体重(水分)が減るのは異常ではありません


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今日の投稿は運動に際しての水分補給、脱水についてシリーズ第2回です。
前回の投稿で、ラボでの研究からの解釈で「水分補給すると(少なからず)体温は下がる」と確認できた事を書きました。

おさらい:
運動中の中核温は普段より高い体温でコントロールされている。
運動中の代謝率(強度)が体温を決める。

ラボでは、とても“純粋”なデータが計れます。
ラボでの研究が無かったら、生理系の動きや特性がわかりません。
が、ラボの中は現実の状況とは違っています。
こういう研究で集めたデータをどうやって適用するのかが大事ですね。
リアルな環境での研究も含めて結論を下さないといけない。

それでは現地(リアルな環境)の研究では なにがわかってきてるのでしょうか?

実際の運動中、体温はどんな変化を?

二つの研究があって、どちらもレース中の直腸温を計りました。
一つは56kmのラン(ロード)レース
もう一つは109kmのサイクリング(ロード)レース

集めたデータは:
ラン
Run Data

サイクリング
Cycle Data

この二つの研究でわかってきた事は、直腸温はレーススタートから1時間位上がり続きで、その後は安定して小幅に続きます(0.5度以下)。
ランの場合は涼しいウェットコンディションで完走を目指した時のモノ。
サイクリストはあたたかいドライコンディションでの高強度レース。
タイプは違っても、体温の変化は似たような動き方です。

体温が上がるのは正常です

もう一つ現地でわかったきた事は、レース後の高い直腸温は決して異常な事ではありません。
上記以外にも13もの論文があります。
が、どれも直腸温は37~41.7度。
そして37度の論文は、エイジレベル・一般のランナー(フルマラソンを4~6時間の強度)。
41.7度はよく鍛えているランナー(完走時間2:30~2:45)。



高い強度でレースするアスリートは高い中核体温を示しています。
しかもこのアスリートは「高い」体温になっても熱中症にならないし、すぐ普通の状態に戻せる。
39~41度の体温変化だと、身体の対応機能が充分に働きます。

運動中に水分と体重が減るのは普通

40年代には、アメリカ軍から砂漠を行軍する兵士のデータが発表されました。
このデータは“The Physiology of Man in the Desert.”(EF Adolph)という本に書かれました。
この中で一番大事なポイントは:
自由に水分を取るとパフォーマンスに十分効果あります(砂漠でのハイキング)
水分を制限するとパフォーマンスに影響あり(制限されたグループの中11人が不完走、水分取れたグループは1人だけ不完走)

また 他の研究からは、フルマラソンや耐久イベントに出場のアスリートは、減った体重の40~60%しか補給してない(できてない)事も明らかに、、、。
また レース・イベントの後では、ほとんどの選手において 2~5%の水分が失われています。

このデータを見ると、この程度の体重・水分が減っても、“倒れる” とか “高い中核体温(熱中症)” との関係ははっきりしません。

結局

リアルな環境でのデータを見ると、環境、水分補給とも関係なく、体温は代謝率で決まってくる。

運動時にこの程度の体重が減ったとしても パフォーマンスにほとんど影響しませんし、熱中症になるとは限らない。
(よくTVや雑誌の広告で「2~5%(スタート時の体重から)の脱水で 健康・パフォーマンスに有害」とききますが、、、)
もちろん、42度を超えるほどの強度を長時間続けると オーバーヒート起こしますけどね、、、

さらにパート1で書いたように、もっと水を飲めば冷えるとの研究データもあり、それぞれのデータは逆の結果。実際はどちらが正しいのか?

最終的には水分を取ると体温の調整能力に影響しますが、その効果は意外に少ない(もしは誇張されてる)ようです。自然と、身体は自らをオーバーヒートさせないために、強度を落として守ろうとします。

続き、、、

Photo credit: “U.S. Army”. CC License.


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