速さはパワーだけではありません。効率も大切です。


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ペーシングについて、萩野公介選手のアジア大会の200mフリーのパフォーマンスを見てみます。
アジアのライバル孫楊(スン・ヤン)選手と朴泰桓(パク・テファン)選手に勝った事は素晴らしかったンですが、それ以上にレースのペース配分に驚きました。

萩野選手、最終スプリットに入って 別のギアがあるかのようにスピードを上げました(150~200mスプリットが26.00!!)。
最初の3スプリットはトップの三人で一番遅かったというのにです。 これは作戦も素晴らしかったという事でしょう。
D1-1 / 2014 Asian Games – Men’s 200m Freestyle Final (Youtube)

レースを見た後、スプリットデーターをモデルに入れてみました。
研究所やモータースポーツでは、モデルを使ったシュミレートから、レース本番の作戦を計算します。
モータースポーツではいろいろなパラメーターで計ってますが、その中の一つ そしてとても大事なポイントは、1周の燃料消費量。 1周の燃料摂取量でレース作戦を決めるのがものすごく大事なのです。
たとえば、

  1. サーキットでのF1車両は1周に約3kgの燃料を使う。
  2. この車重変更で ‘0.03~0.05秒/1周’ 速くなる。
  3. ピットストップにかかる時間:燃料を入れる時間(1Lを入れるのに何秒かかる)とピットレーンのスピード制限でのタイムロス。

この情報を基に、ピットストップ回数とタイミングを調整して最短時間(最高なパフォーマンス)を計算します。
こういう分析的なアプローチは、モータースポーツでよく使われてます。



水泳でのエネルギー消費の計測・記録はなかなか難しいのです。車と違って、センサーやデーターを取る機械をスイマー自身につけると、パフォーマンスに大きな抵抗がある(水の抵抗が増える、バランスが変わるためにストローク効率が変わるなど)ため、レース中のデーターはなかなか直接取れません。
テスト、練習中、タイムトライアルやレースのシミュレーションでのデーターしか取れません。
その代わりに現在では、上記のような数学的モデルを使って スイマーのスプリット毎のエネルギー消費量を予測します。
このモデルの計算式は、このブログの読者につまらないと思いますので、ココでは飛ばします 笑)

それでは、アジア大会の200mフリー トップ3のグラフ:

graph1_energy_W

graph2_energy_kcal

上はエネルギー消費量(ワット)、下は消費カロリー(kcal)。 ともにスプリット毎です。

萩野選手は5.01 (100-150m) から6.17 (0-50m) kcal/スプリット。
孫選手は6.8 (100-150m)から8.1 (0-50m) kcal/スプリット。
予想通り、一番速いスプリットで一番エネルギーを出して、一番遅いスプリットでは抑えられています。

また孫選手は、この三人の中で 最もエネルギーを使っています。
萩野:21.89 kcal
孫:28.82 kcal
朴:24.21 kcal

それを踏まえて、スプリットタイムのグラフ:
graph3_splits

エネルギー消費量とスプリットタイムを比べると、萩野選手の効率は見事(少ないエネルギーで速く泳げる)。

まとめ

萩野選手は身長1.75m、体重約68kg。 孫選手は1.98m、体重約89kg。
孫選手は、高いトップスピード 大きな面積(身体が大きい)で抵抗が大きいだけ、高いエネルギーを使ってました。
こういった情報を上手く活用したレースの作戦(展開)を組めば、最終的なパフォーマンス(順位)は更にあがりそうです。

この計算が全てではないのですが、最も効率のいい選手が最高なパフォーマンス(優勝)を出すことはよくあることです。
もちろんごく稀にイレギュラーな事もあります。 たとえば2009年のローマ世界選手権での200mフリーでは、実は2位のフェルプス(1:43:22)が最も効率がよかったのです(1位はビーダーマンで1:42:00 – 現在の世界記録)。

とはいえ、選手の能力を踏まえてレースの作戦を考えるメリットは大きいですね!

Photo credit: “Lis í Jákupsstovu”. CC License.


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