オリンピック選手の寒さ対策


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先週の記事で、身体は寒さに慣れないと書きました。
とはいえ、寒い時期もスポーツは待ってくれません 笑)
じゃぁ どうやってパフォーマンスを高める?
そんな今月は冬季オリンピックです。
さすがは冬季オリンピック選手。彼らの寒さ対策はいろいろ勉強になります。

基本的に脳と心臓を普通に動かすためには、深部体温(中核体温)を37度位に維持する必要があります。
たった2度下がる(35度以下)だけで低体温症の症状が出始めます。

最初は、意識の混乱, 協調運動障害など
極めて寒いコンディションや、長時間の低体温が続くと、臓器不全を起こして、最終的に死に至ります。

深部体温を安全幅の間に維持するポイントは:
1. 体がどのぐらい熱を作れるか
2. 体がどのぐらい空気・水に熱をロスさせないか

身体は炉みたいなもの。
筋肉でエネルギー1カロリを消費すると4分の1位は力になる。後の3分の1が熱です。
熱はいくらでも作れるけど、人それぞれの発熱量は最大酸素摂取量(VO2max)に制限されています。
今回ソチに出場するクロスカントリースキー選手たちは、普通の人より炉を熱く、長く燃え続けられるから、割と薄い服で長い練習できる。

逆にどの位冷えるのかは、ほとんどの場合が服次第です。
コンディションに合う服を着ていれば、普通は冷えすぎる事はありません。

この二つのバランスは、運動の強度の変化や 服の絶縁特性変化(汗や水で服が濡れてしまう)で急激に変わります。
1964年。イギリスでハイキング中の3人が死亡した事故がありました。
気温は0度以上の天気で、動き続けていれば大丈夫だったはずだけど、汗で濡れた服のままで休憩で止まってしまった為、深部体温がどんどん減ってしまい90分後に倒れた。
90年代のアメリカ軍で、フロリダ州(暖かいところ)でも4名が低体温症で死亡しました。
炉の火を切ったら、ゆるい寒さでも死亡の危険性があります。

アスリートは、手足を普通に動かせる事がとても大事。
寒いコンディションの中では、肌の温度が下がると 体の熱のロスを減らすために、手足の抹消血管を細くします。
深部体温を維持するために、体が不随意の反射で 指先などの先端を犠牲にするワケです。(Physiological amputation)

以上の理由で、心臓バクバクのスキーと 完全に止まっている状態のライフル射撃(この止まっている時間に身体はイッキに冷え始める)を切り替えるバイアスロンはとても難しい。

寒くない時でも弾丸をライフルに装填するには器用さが必要なのに、無感覚の指ではそれはとても大変な作業となります。



Starting Glitch Costs Teela in Olympic Biathlon

このためにバイアスリートはマニアックなくらい手・指先を濡れないようにする。
手袋も、アップ用のセットと、温めた別のセットをレース用に使い分ける。
とっても寒いスタートだったら、レース用手袋の上にもう一枚重ねて、第一射撃の時に捨てたりします。
目的は:暖かさを維持する事と、何よりも汗や水で濡らさないようにするため。

後は深部体温をできるだけを暑くする。
ウェアの重ね着を厳しくコントロールしたり、カイロを持ったり、レース数秒前まで厚いジャケットを着たりします。

カナダやアメリカの軍事研究所からは、手足の温度を維持するより 深部体温を維持するほうが有利との報告があります。

カナダの軍事研究
マイナス25度の部屋に3時間。
被験者(8名)は3層の服(スノボの時のような服)を着る。
1. 薄い手袋 + ごついミトン (Arctic Mitt)
2. 電気ヒーター付き手袋 + ごついミトン (Arctic Mitt)
3. 特別電気ヒーター付シャツ + 薄い手袋 + ごついミトン (Arctic Mitt)
4. 特別電気ヒーター付シャツ (手袋なし)
3時間の間に30分に一回、ライフルの分解と組み立てなどの細かい作業のテスト(2種類)をしました。

結果:
特別電気ヒーター付シャツで胴体の大事な部位を温め、深部体温を維持すると、手袋がなくても指の温度が維持できたし、細かい作業にも支障はなかった。(胴体、手袋なしより)
深部体温を維持すると、手足の血管の締め付けるリーフレクスを抑えられる。
軍とすれば、ライフル銃の分解組立作業などでは、ゴツい手袋はなるべく避けたいンでしょうね。

また、アメリカの軍事研究では
10人でマイナス15度の部屋に60分。目出し帽の被り方(顔をどこまで隠すか)次第で細かい作業の速さ 正確さを比較。
顔を隠せば深部温度を維持ができて、指の温度も温かく 指器用テストの結果が高かった。

日本の寒いマラソンシーズンに大会・トレーニング(他の外での作業)をする時、できるだけ汗で濡れないように(深部体温を守ること)が大事。
深部体温で一瞬でも「寒い」と感じたら、だいたい手先は冷えてます。
現在、カナダのテストで使っていた特別ヒーター付きシャツが、商品として発売準備の段階だそうです。
それが発売されるまでは 笑)、肌の露出をカバーしたほうがいいでしょうね。

J : 忍者の格好は完璧?
Hiro:言うなれば、着物時代 究極の運動着。 着物といえば 薄手の生地を重ね着。 ある意味 そうかもね!笑)

Photo credits:
The U.S. Army”.  CC License.
DVIDSHUB”. CC License.
 

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